OTRSは、オープンソース・チケット・リクエスト・システム (Open-source Ticket Request System) の略で、会社や組織や団体が、受け取った個々の質問とそれに対して会社等が行なった対応の履歴を「チケット」と呼ばれる単位でまとめて管理できるソフトウェアである。以前はオープンソースであったが、現在はプロプライエタリソフトウェアである。
概要
OTRSによって発行された全てのチケットは、それに関連する履歴や事象が共に保存され、表示できる。似たような事例のチケットをまとめて管理できるため、一つの不具合が多数の顧客に影響し、似たような問い合わせを大量に受けたような場合に、対応を管理するのが格段に容易になる。またマルチユーザーシステムであるため、複数のOTRSの利用者が同一案件に対して同時に対処でき、受信メッセージの確認、整理、回答といった対応をすることができる。OTRSはスケーラブルであり、1日に何千ものチケットを扱うことができ、同時に操作できる利用者の数もほぼ無限である。以前は、日本語ウィキペディアを含めてウィキメディア財団の各プロジェクトも外部からの問い合わせ等にこのシステムを利用していた。
OTRSはFAQの文を作成・編集・検索するための統合された機能を持つ。利用者は、チケットに関連する回答の中にFAQの文を埋め込んでもよい。
OTRSはウェブブラウザから操作されるので、利用者のコンピュータ等のオペレーティングシステムが何であっても、ウェブブラウザさえ動作すれば操作ができる。会社等の関係者以外の者が、OTRSにアクセスし、チケットに情報を追加できるようにすることもできる。
OTRSは、機能の骨組みを提供する。例えば、ドイツのBSIという組織が使っているSIRIOSというシステムは、OTRSを基にして作られている。
歴史
OTRS.orgのプロジェクトは、マルティン・エデンホファーによって、2001年に創設された。OTRSは現在全世界で2万回以上インストールされている。 2020年12月、OTRS AGはコミュニティ・エディションのサポートを終了した。これによりやZnunyやOTOBOといったフォークが生まれた。
OTRSの開発
OTRSは開発当初よりプログラミング言語Perlで実行されている。ウェブインターフェースはJavaScriptを使うことでユーザーにより使いやすく作られている(セキュリティー上の理由からそれをオフにすることもできる)。OTRSの異なる機能面は再利用できるバックエンドモジュールとして実行されている。従って、OTRSシステムの機能面を拡張するために自分のモジュールを書くことが簡単である。
ウェブインターフェースそれ自体はダイナミックテンプレートランゲージ (DTL) と呼ばれる独特のテンプレートメカニズムを使って、システム出力データの表示を容易にしている。
最初、OTRSはMySQLデータベース上でのみ動作した。後に、PostgreSQL、Oracle Database、DB2、Microsoft SQL Serverのサポートが追加された。OTRSはWindows上だけではなく(Linux, macOS, FreeBSDなど)数多くのUNIXやUnix系プラットフォーム上でも使える。
OTRSシステムの能力は、Apache HTTP Serverのためのmod_perlを使うことや、データベースとウェブサーバーシステムを分けることにより高めることができる。これによって、大量の同時操作者や大量のチケット数をこなすことができる。
UNIXや類似の環境ではOTRSは、メール転送エージェントのPostfixのようなシステムプログラムやメールフィルターのprocmailと親和性高く動作する。
脚注
外部リンク
- OTRS.org – プロジェクトサイト
- OTRS GmbH – OTRS社




